第3話 福岡と佐賀の歩き方

 これは,愛知と滋賀を訪れたJohn Smith (2022/11参照) のその後の物語である.

 

 

 

 

Johnは学会発表に真摯に向き合い,多くの事を学んだ.

少し時を遡る.

 

 

 

 

64日,羽田空港,機内.

窓から色んな鳥を眺める.

福岡を目指す飛行機と学会発表に臨むJohn2つの滑走路が重なる.

 

 

 

 

飛行機は旋回しながら着陸態勢に入った.

窓から見下ろす福岡の街並みは,どこか横浜に似ている.

車の音,子供達の声,学校のチャイム.

聞こえないはずの音が心に響く.

住んでいる街は違えど,そこにも変わらない日常があった.

 

 

 

 

空港から久留米に移動し,夜を迎えた.

同胞達と名物もつ鍋を楽しむJohn

もつ鍋は,実はとても健康的な料理らしい.

〆まで貪るように堪能し,移動の疲れを癒す.

 

 

 

 

ある時Johnは,焼鳥屋の客だった.

久留米の焼き鳥はダルムが人気らしく,彼はそれに加えてハツを気に入ったようだ.

しょっぱいものを食べたら甘いものが欲しくなる.

デザートで注文したフルーツパフェが彼の甘味欲を満たす.

 

 

 

 

英気を養い,Johnは学会発表に臨んだ.

初めての英語発表だったが,多くの学生や科学者と議論を交わすことができた.

 

発表の余韻に浸りつつ,彼は同胞達と共に久留米に別れを告げる.

我々を出迎え,発表まで心の支えになってくれた未確認生物がいる.

それはどこか寂しそうな表情をしていた.

「ようこそ」は別れに見合わない.

しかし,出口は入口でもある.

いつかまた久留米を訪れるその日まで,元気でいてほしい.

だから我々は未確認生物「くるっぱ」に告げる.

 

「行ってきます.」

 

Johnよ,同胞達よ,振り向くな.

再会の誓いに涙はいらない.

 

 

 

 

大紀行はいよいよ佳境を迎える.

電車に揺られ,佐賀県の鳥栖駅で一度下車した.

ここはサッカーチーム「サガン鳥栖」の本拠地らしい.

プラットフォームから鳥栖スタジアムが見える.

線路の雑草と貨物列車が郊外の風情を醸し出す.

心地良いそよ風が,Johnを腰掛けにとどめようとする.

 

Johnは北海道の観光スポットを調べながら次の電車に乗り込んだ.

 

 

 

 

電車を降りて少し歩けば,そこは旅の最終目的地,吉野ヶ里遺跡だ.

目の前に広がるのは,2000年前の日本.

人間の生きた証が悠久の時を経て今,そして未来へとつながる.

 

我々も遠い未来に何かを残すのだろうか?

いつの日か,人類が歴史の一部になったとしても,
その時を生きる存在に何かを語りかけるのだろうか?

 

 

 

 

遺跡には多くの竪穴式住居があり,John達はその中に潜り込む.

Johnは語る.

 

「これは弥生時代のLDKだ.」

 

間違ってはいない.

所狭しと置かれた食器や家具は,当時の生活を巧みに再現していた.

 

 

 

 

6日間の学会と旅を終え,John達は飛行機に乗り込んだ.

夜が灯る街の向こう,地平線の彼方に夕日が沈む.

Johnは名残惜しそうに眺める.

 

 

 

 

……帰ろう.」