第5話 北海道の歩き方

 

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僕の名前はKevin Brown
巷では「爪切りの神様」と呼ばれている.

 

僕はひったくりだ.

所謂,バイクに乗って物を盗るそこら中の輩とは異なる.

人の思い出を我が物にするひったくりだ.

 

1年前だろうか?

僕は,後にJohn Smithと名付けた男に出会った.

彼はその時,旅行中だった.

だから僕は,彼から盗んだ.

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Johnが突然,姿を消した.

上海 (2023/07参照) の帰りに彼はこう言っていた.

 

「探し物があるから,しばらく会えない.」

 

辛うじて連絡は取れるので,北海道にいると分かった.

AIRDO機内

彼の足跡を追って早速北海道へ飛んだ.

 

 

 

 

僕はプロのひったくりなので,
彼の痕跡は手に盗るように,
いや,手に取るように分かった.

屈斜路湖畔

屈斜路湖,三日月形のカルデラ湖である.

 

近くにはアイヌ料理店があった.

店員にJohnの特徴を話すと,
彼が食べた料理を出してくれた.

野生丼&ルイペセット

ルイペとは,パリモモの身を冷凍して

スライスしたアイヌ風の刺身だ.

 

 

 

 

屈斜路湖の近くには火山もある.

硫黄山

山肌の至る所から硫黄が噴き出ている.

 

近くのレストハウスで休憩した.

夕張メロン&バニラソフト

Johnの探し物に心当たりはない.

せっかく北海道に来たのだから,
僕も観光することにしよう.

 

 

 

 

その日の夜,僕は宿の近くの居酒屋で
夕食をとることにした.

Johnに似た人物の目撃報告があったからだ.

摩周ソーダ

目撃者が言うには,彼は知床に向かったらしい.

椎茸バター炒め,焼鳥,蛸山葵,ジャガイモコロッケ

大自然を体感したいとのことだ.

卵雑炊

おすすめのメニューを一通り味わい,明日に備えた.

 

 

 

 

翌朝,僕は知床に行く前に,1つ寄り道をした.

摩周湖

ここは「霧の摩周湖」と呼ばれる観光名所で,

文字通り霧が出やすい.

 

寄り道を終えた僕は車に乗り込み,
知床に向けて北の大地を駆け抜ける.

北海道の大地

灰色が晴れぬまま,ただ走る.

 

Johnの思い出は,今までの誰よりも
盗む価値がある.

とある踏切

だからひたすら彼の旅先を追いかけてきた.

朝食の「ウニいくら丼」

僕は自分の生き方が分からない.

コケモモソフト

だから彼の「あの言葉」を心の支えにした.

彼の思い出から生き方を学びたかった.

 

 

 

 

とうとう知床国立公園に着いた.

遊歩道を1人進んでゆく.

遊歩道

この国立公園には5つの湖が存在する.

一湖

水面を緑があてもなく泳ぐ.

エゾシカ

草原で鹿が戯れる.

僕は北海道の大自然を満喫し,次の場所を目指す.

 

 

 

 

峠からの景色は良いと聞いていたが,
天気が邪魔してそのまま先に進むことにした.

知床峠

峠を越えた先にあるのが次の目的地だ.

車を停め,深い茂みの中を歩いて行くと
目的地が見えてくる.

熊越の滝

滝だけではない.

森と川

歩いてきた道は,
まさに大自然と呼ぶべきだろう.

 

 

 

 

羅臼の街で昼食を食べることにしよう.

三色丼(カニ・いくら・サーモン)

ここは漁港の街だ.

羅臼国後展望塔

本日二度目の海鮮丼と展望台からの眺めに満足し,
羅臼を後にする.

 

北海道の大地は想像以上に広大だ.

天空への道

地平線の先には何が待ち受けているのだろうか?

 

 

 

 

待ち受けていたのは今日の夕食だ.

ジンギスカン

気付けばかなりの距離を走っていたようだ.

ジンギスカンは言わずと知れた北海道名物.

デザートも注文した.

パンナコッタ

プリンに近い味と食感だ.

 

食事を終えた僕は宿を目指し,
灯に導かれるまま,夜の道を泳いでゆく.

とある踏切

そういえば知床ではJohnを見かけなかった.

 

 

 

 

時計が鳴り,目を覚ます.

少し寒い.

カーナビを網走に設定した.

網走港東防波堤灯台

クリオネを飾った灯台が,
冬じみた海で孤独を歌う.

 

オホーツク海は冬になると,
大量の流氷が押し寄せてくるらしい.

今は真逆の季節だが,一目見ようと思い
僕は流氷館に足を運んだ.

オホーツク流氷館

流氷館には-15℃の氷室がある.

流氷体感テラス

実際に流氷を間近で見られるのだが,

とにかく寒い.

氷室から生還して次の目的地を目指す.

 

 

 

 

飛行機まで時間があったため,
空港の程近くのリス園に寄った.

シマリス

リスでも生き方に迷う時があるのだろうか?

僕はそんなことを考えながら,
ただリスが種を頬張るのを眺めていた.

 

 

 

 

結局北海道でJohnと会うことは無かった.

羽田空港

かすかな憂いが夏に紛れる.