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僕の名前はKevin
Brown,
巷では「爪切りの神様」と呼ばれている.
僕はひったくりだ.
所謂,バイクに乗って物を盗るそこら中の輩とは異なる.
人の思い出を我が物にするひったくりだ.
1年前だろうか?
僕は,後にJohn
Smithと名付けた男に出会った.
彼はその時,旅行中だった.
だから僕は,彼から盗んだ.
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Johnが突然,姿を消した.
上海 (2023/07参照) の帰りに彼はこう言っていた.
「探し物があるから,しばらく会えない.」
辛うじて連絡は取れるので,北海道にいると分かった.
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AIRDO機内 |
彼の足跡を追って早速北海道へ飛んだ.
僕はプロのひったくりなので,
彼の痕跡は手に盗るように,
いや,手に取るように分かった.
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屈斜路湖畔 |
屈斜路湖,三日月形のカルデラ湖である.
近くにはアイヌ料理店があった.
店員にJohnの特徴を話すと,
彼が食べた料理を出してくれた.
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野生丼&ルイペセット |
ルイペとは,パリモモの身を冷凍して
スライスしたアイヌ風の刺身だ.
屈斜路湖の近くには火山もある.
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硫黄山 |
山肌の至る所から硫黄が噴き出ている.
近くのレストハウスで休憩した.
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夕張メロン&バニラソフト |
Johnの探し物に心当たりはない.
せっかく北海道に来たのだから,
僕も観光することにしよう.
その日の夜,僕は宿の近くの居酒屋で
夕食をとることにした.
Johnに似た人物の目撃報告があったからだ.
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摩周ソーダ |
目撃者が言うには,彼は知床に向かったらしい.
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椎茸バター炒め,焼鳥,蛸山葵,ジャガイモコロッケ |
大自然を体感したいとのことだ.
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卵雑炊 |
おすすめのメニューを一通り味わい,明日に備えた.
翌朝,僕は知床に行く前に,1つ寄り道をした.
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摩周湖 |
ここは「霧の摩周湖」と呼ばれる観光名所で,
寄り道を終えた僕は車に乗り込み,
知床に向けて北の大地を駆け抜ける.
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北海道の大地 |
灰色が晴れぬまま,ただ走る.
Johnの思い出は,今までの誰よりも
盗む価値がある.
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とある踏切 |
だからひたすら彼の旅先を追いかけてきた.
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朝食の「ウニいくら丼」 |
僕は自分の生き方が分からない.
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コケモモソフト |
だから彼の「あの言葉」を心の支えにした.
彼の思い出から生き方を学びたかった.
とうとう知床国立公園に着いた.
遊歩道を1人進んでゆく.
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遊歩道 |
この国立公園には5つの湖が存在する.
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一湖 |
水面を緑があてもなく泳ぐ.
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エゾシカ |
草原で鹿が戯れる.
僕は北海道の大自然を満喫し,次の場所を目指す.
峠からの景色は良いと聞いていたが,
天気が邪魔してそのまま先に進むことにした.
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知床峠 |
峠を越えた先にあるのが次の目的地だ.
車を停め,深い茂みの中を歩いて行くと
目的地が見えてくる.
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熊越の滝 |
滝だけではない.
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森と川 |
歩いてきた道は,
まさに大自然と呼ぶべきだろう.
羅臼の街で昼食を食べることにしよう.
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三色丼(カニ・いくら・サーモン) |
ここは漁港の街だ.
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羅臼国後展望塔 |
本日二度目の海鮮丼と展望台からの眺めに満足し,
羅臼を後にする.
北海道の大地は想像以上に広大だ.
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天空への道 |
地平線の先には何が待ち受けているのだろうか?
待ち受けていたのは今日の夕食だ.
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ジンギスカン |
気付けばかなりの距離を走っていたようだ.
ジンギスカンは言わずと知れた北海道名物.
デザートも注文した.
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パンナコッタ |
プリンに近い味と食感だ.
食事を終えた僕は宿を目指し,
灯に導かれるまま,夜の道を泳いでゆく.
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とある踏切 |
そういえば知床ではJohnを見かけなかった.
時計が鳴り,目を覚ます.
少し寒い.
カーナビを網走に設定した.
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網走港東防波堤灯台 |
クリオネを飾った灯台が,
冬じみた海で孤独を歌う.
オホーツク海は冬になると,
大量の流氷が押し寄せてくるらしい.
今は真逆の季節だが,一目見ようと思い
僕は流氷館に足を運んだ.
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オホーツク流氷館 |
流氷館には-15℃の氷室がある.
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流氷体感テラス |
実際に流氷を間近で見られるのだが,
氷室から生還して次の目的地を目指す.
飛行機まで時間があったため,
空港の程近くのリス園に寄った.
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シマリス |
リスでも生き方に迷う時があるのだろうか?
僕はそんなことを考えながら,
ただリスが種を頬張るのを眺めていた.
結局北海道でJohnと会うことは無かった.
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羽田空港 |
かすかな憂いが夏に紛れる.