第7話 秋田の歩き方

 

 

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僕はKevin Brown,ひったくりだ.

 

物心ついた時から,
僕は教科書が好きだった.

いつも一人だったから,
それを毎日読んだ.

 

でも,人生の教科書は
どこにもなかった.

そんな僕は,
今日も誰かの真似をする.

 

人は教科書だ.

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秋田県へ行くことにした.

東京駅から新幹線に乗り,大曲駅を目指す.

 

大曲駅


新幹線に3時間立ち続け,すでに体力が限界だ.

近くの店に駆け込み,昼食を摂る.

 

何かのセット


生姜のような見た目をした漬物は,
秋田県名物のいぶりがっこ.

燻製にされており,米との相性がとても良い.

 

 

 

 

大曲駅から車で30分走れば,
横手城が見えてくる.

 

横手城

400年以上前に出来たらしいが,
詳しい時期は分かっていない.

 

何かのソフトクリーム

城下は閑散としており,
のどかな雰囲気に僕は一息つく.

 

車に乗り込んで次に目指したのは,
「角館」という,武家屋敷が立ち並ぶ街.

 

青柳家のリビング

囲炉裏を見ていると
何かを食べたくなってくる.

 

というわけで,
秋田名物「きりたんぽ」を求めて,
夜の秋田市街地に繰り出した.

 

きりたんぽ鍋

粒の粗い米のような食感を堪能していると,
突然John Smithの目撃情報が入った.

少し長めに秋田県に滞在するとしよう.

 

 

 

 

ふと,星を見に行こうと思った.

不安や孤独を抱え,
明かりのない道を走り抜ける.

おもむろに空を見上げた.

 

夜の淵から覗く空

宇宙が広がっていた. 


光の雨

夜空に煌めく無数の光が降り注ぐ.

夏の大三角が天高く歌う.

 

鳥居と星空

夜空のプリズムは徐々に鮮明になる.

浮かび上がる星々を
なんとなく指でなぞってみた.

 

 

 

 

なぜ秋田県に来たのか?

それは自分でも分からない.

 

朝食「ババヘラアイス」

「そこに秋田県があるから」などという,
妄言を吐くつもりはない.

何かを感じたのだろう.

 

寒風山からの眺め

ひったくりもそうだ.

何か感じるものがあるから,
興味を持ち,盗みに行く.

 

さて,僕はいつの間に
なまはげ館に来ていた.

 

なまはげ

なまはげは悪い子供を
更生させる力を持つ神様らしい.

 

なまはげの玉

「悪いことをするとなまはげが来る」
という迷信がある.

ところでみんなは何歳まで
迷信や神様を信じていたのだろうか?

 

昼食「海鮮丼」

僕は神様を最初から信じていなかった.

これは確信を持って言える.

神輿はただの箱だし,
お賽銭は住人の生活費だ.

 

入道崎

宗教も一部の偉い人が儲かるために
人を騙しているだけだと知っていた.

 

入道崎から望む海


そんな賢しい僕だが,
お化けがいないと知ったのは
中学生になってからだ.

 

入道崎「日時計石」

一緒に遊んでいた友達から
とんでもない形相で追われた時,
本当にお化けだと思った.

 

入道崎「北斗の石」

ある夜,マンションの廊下で
奇声を上げて走る人の音を聴いて
本気でお化けだと思った.

 

入道崎灯台

それはさておき,
また一日が終わろうとしていた.

 

ゴジラ岩

ここはのどかな所だ.

都会の喧騒を忘れ,
違う世界に迷い込んだと錯覚する.

 

 

 

 

田沢湖に程近いホテルで
また一晩を過ごした.

 

朝食「バニラとラムネのソフトクリーム」

朝食を堪能し,田沢湖へ向かう.

 

補色

田沢湖は日本一深い湖で,
100
万年以上前の火山活動に
よって出来たらしい.

 

 

 

 

突然の再会だった.

 

田沢湖の桟橋

あれは紛れもなくJohnだ.

 

久しいね,Kevin.」

 

それだけ言うと,
無言で遊覧船乗り場に向かう.

僕は違和感を抱きつつも,
ただ追いかける.

 

田沢湖遊覧船

湖面はコバルトブルーに輝く.

白い波を立てながら船は進む.

 

波の一瞬

Johnがおもむろに口を開く.

 

「君は紀行を書くのが好きなのか?」

 

僕はただ,Johnという教科書を
真似するひったくりに過ぎない.

だから,分からないとしか
言えなかった.

 

湖と鳥居

船から御座石神社を望む.

星が降る夜に訪れた鳥居は
日を浴びて静かに佇む.

 

船を降り,湖畔をゆく.

ほとりに立つ金色の像には
古くから伝わる伝説がある.

 

たつこ像

モチーフとなった辰子は
永遠の美貌を手に入れるため,
とある泉の水を飲んだ.

 

御座石神社


しかし,飲めば飲むほど喉が渇き,
泉が枯れる頃には竜へと変貌し,
田沢湖の底へと沈んでいったという.

 

 

 

 

日が暮れ始め,
カラスの声が静まり返った湖に響く.

前を歩くJohnが立ち止まる.

 

Kevin,君は……すごいと思う.
僕の紀行を書くとき,何を考えているの?」

 

今までの旅路が脳裏によみがえる.

真似でしかないが,以前Johnが言ったように,
僕もありのままを書いてきたつもりだ.

だから自信を持って言える.

 

「何も考えていないよ.」

 

一瞬Johnの顔が曇る.

 

「そうかそんな
……
フフ,ハハハハッ